【バイト】バーテンダーバイトレポート

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はじめに

 私がバーテンダーのアルバイトを始めたきっかけは、「なんだかおしゃれでかっこいい」という、かなり単純な憧れからでした。映画やドラマで見るバーは、照明が少し暗くて、カウンター越しにグラスがきらりと光る大人の世界。バーテンダーのお酒を注ぐ仕草ひとつにも品があって、「ここで働いてる自分、最高にイケてるじゃん・・・」と思ったのです。


 実のところ私はバーに行った経験がそれまでほとんどありませんでした。お酒もそんなに詳しくないし、カクテルの名前も数えるほどしか知りません。漠然とした憧れはあったけど。

 それでも、大学の友人にやたらお酒に詳しい子がいて、その子の話を聞くうちに「お酒の世界って面白そうだな」と興味が湧いたんです。そんな時、なんとなく見ていた求人サイトで、私の趣味とぴったり合うコンセプトのバーを見つけたのです。しかも場所は定期券の範囲内。これは運命だ!と思い、すぐに応募しました。

 とはいえ、私にはひとつ大きなハードルがありました。

 留学の予定があったため、働けるのはたったの3か月だということ(なめすぎ)。飲食店のバイトとしては短すぎます。正直、面接に行っても「短期はちょっと・・・」と言われて終わりだろうと思っていました。

 ところが、ダメもとで行ってみると、マスターが私の英語力や趣味に興味を持ってくれ、思いがけず採用してもらえることになったのです。聞けば、そのバーは外国人観光客が多く、英語で接客できるスタッフは貴重なのだとか。そんな背景もあって、短期でも歓迎してもらえたのは本当に幸運でした。

 さらに、もうひとつ申し訳ない条件がありました。定期県内とはいえバーから家までが少し遠く、どうしても終電の23時頃には上がらせてもらわなければならなかったのです。普通なら夜遅くまで営業しているバーでは敬遠される条件ですが、マスターは「無理せず通える範囲でやってくれればいいよ」と言ってくれました。マスターの裁量で自由にやらせてもらえるのが個人経営のお店の強みなのかもしれません。

 こうして、私の「おしゃれな大人の世界」への第一歩が始まりました。

 そして、この時点ではまだ、ほぼワンオペでマルチタスクをこなす日々や、人生観が私とまんま同じなトルコ人と熱く語り合う日が来ることなど、想像もしていませんでした。

 今振り返れば、この出会いと条件こそが、私にとって忘れられない3か月を作り出すきっかけになったのです。

バーテンダーの仕事内容

お酒を作る

 バーテンダーと聞いて真っ先に思い浮かべる仕事といえば、やはり「お酒を作る」ことですよね。カウンターに座ったお客さまから注文を受け、その場で手際よくドリンクを仕上げていきます。

 私の勤めていたバーでは、生ビールをはじめ、世界各国の瓶ビール――ハイネケン、コロナ、ヒューガルデン、IPAなど、種類は実に豊富でした。さらに、ジンやテキーラ、ラムといったスピリッツをベースにジュースやソーダで割るロングカクテル、マティーニやグラスホッパーなどシェイカーを使うショートカクテル、日本酒やウイスキーまで幅広く取り扱っていました。

 個人的にはいかにもバーテンダーらしい、シェイカーをシャカシャカ振って作るドリンクを作れたのが嬉しかったですね。あれただシャカシャカするだけじゃなくて、中の氷がカラカラ回るように振るといったコツがいるんですよ。それに、やりすぎると凍ってしまうそうです。

 単純にお酒をグラスに注ぐだけではありません。それぞれのドリンクには決まった分量や作り方があり、レシピ通りに作らなければ味が変わってしまいます。特にビールは、グラスに注ぐスピードやグラスの湿度、その日の店内の気温等ひとつで泡のバランスが全然違ってくるため、思った以上に繊細な作業でコツがいります。最初はあわまみれにしてしまうときもありました。週2でシフトに入っているので、練習しているうちにようやく上達。最近はこのビールを上手く入れられた瞬間が1番気持ちよくて好きです。

 また、お酒を作る時間は、お客さまとのちょっとした会話の時間でもあります。「今日は暑いですね」「このカクテル、初めて飲むんです」など、グラスの向こうで交わされる何気ないやり取りが、その日の雰囲気を作っていきます。お酒作りは単なる調理作業ではなく、接客の一部であり、お客さまにとっての“楽しい時間”そのものなのだと感じるようになりました。

 そう、毎回決まった時間にカウンターに来てくれる常連さんもいて、本当に「いつもの」なんて言われたりもするんですよ。面白いですよね。

洗い物

 洗い物はなんだかんだで私が1番好きな作業かもしれません。正直、バーテンダーの仕事の中では地味な部類に入りますが、間違えて怒られることもなく、少し落ち着いて無心でできる作業だからです。カウンターの奥で水の音を聞きながら、手を動かすだけのこの時間は、接客やオーダーに追われる時間とはまったく別世界です。

 食べ物の皿洗いは、油汚れやソースがこびりついていて少し面倒なのですが、グラスは違います。透明なガラスを水にくぐらせ、スポンジでくるりと洗えば、すぐにピカピカになります。店内の照明の光を受けてきらりと輝く瞬間は、ちょっとした達成感すらあります。最初の頃は、汚れが残らないようにと丁寧にやりすぎて、やたら時間がかかっていました。けれど、経験を積むうちにテンポよく、かつきれいに仕上げるコツが分かってきて、今では心地よいリズムで進められるようになりました。

 忙しい夜の営業中でも、ふと洗い物に集中していると、不思議と心が落ち着いてきます。特に、ちょっと疲れたタイミングでこの作業に入ると、頭の中がすっと静かになり、気持ちがリセットされる感覚があります。最近は留学の準備や色々なバイトで常にバタバタしているので、こういう“無心になれる瞬間”は本当に貴重です。もしかすると、私にとって洗い物は単なる業務ではなく、小さな休憩時間であり、心の整理をするための儀式なのかもしれません。

お客さんとの会話

 私が働いていたバーには、おじさんやおばさん――おそらく30代後半から70代くらいまでの幅広い年代のお客さんがよく来店されます。お店のコンセプトが昔の洋楽ということもあって、洋画や音楽に詳しい方が多いのが特徴です。カウンターの奥から眺めていると、好きなアーティストや名作映画の話で盛り上がっている常連さんたちの姿がよく見えます。

 私自身、少し古めの洋楽が大好きで、留学を控えていることもあり、海外の暮らしや文化にはとても興味があります。そんな私にとって、この環境はまさに宝箱のようでした。マスターや常連さん同士の会話に自然と混ぜてもらえることもあれば、お酒を作りながら1対1でゆっくり話すこともあります。注文を受けてグラスに氷を入れながら、「この曲、知ってる? 70年代のヒットソングなんだよ」と教えてもらったり、「この映画は字幕じゃなくて吹き替え版がまた良いんだ」と熱く語られたりする時間は、本当に楽しいものです。

 会話の中では、単なる趣味の話にとどまらず、その時代の社会の雰囲気や、当時の流行、裏話のような小さな豆知識まで飛び出します。私がまだこの世に存在していなかった頃の話を、目の前の人が生き生きと語ってくれる――それは、まるで時間旅行をしているかのような感覚です。知識や情報がどんどんつながって、自分の大好きな世界が広がっていくのを感じます。

 中には、海外で働いているけれど帰省のタイミングで立ち寄ってくれるお客さんもいます。そういう方からは、現地での仕事の様子や生活習慣、文化の違いなど、リアルな経験談を聞くことができました。自分が将来歩みたい道を、すでに進んでいる“先輩”たちの話は、刺激的で心に残ります。

 ほんの数分、あるいは数十分のやり取りですが、お客さんと交わす会話は、私にとって仕事以上の意味を持っていました。それは、知識を増やし、視野を広げ、そして「自分もこんなふうに人生を語れる大人になりたい」と思わせてくれる、とても幸せな時間だったのです。

接客体験 / 楽しかったこと

お客さんの話が面白い /色々な大人に出会える

 先ほども触れましたが、このバーには洋楽を愛するさまざまな大人たちがやってきます。それこそ、趣味として音楽活動をしている方や、プロとしてバンドをしている方もいれば、出版社に勤めている人、不動産関係、自営業、海外駐在経験のある会社員など、職業も経歴も実に多彩です。カウンター越しに話を聞いていると、その人の人生の断片が、まるで映画のワンシーンのように流れてきます。

 海外で働いているエンジニアの方は、アメリカの政治事情やそれによる生活のリアルな状況などを教えてくれました。最近は移民問題なんかも特に注目されていますが、やはり色々な人種の人が住んでいるアメリカは、理不尽なことに対しては地域のコミュニティで団結して立ち向かうのだといいます。時に書類上の手違いで理不尽に帰国させられてしまうなんてこともあるようで、日本では起きないような角度で身の危険を感じるそうです。その分守ってくれる仲間がいるっているのも素敵なことですよね。

 他にも、自営業の方がお店のお金事情や商工会事情をマスターと話していたり、不動産関係の方は、大きいお金を動かす際の怖い仕事の失敗エピソードを披露してくれました。全然知らない世界で、すごく興味深いです。

 さらに、都内の基地から米軍関係の方が来店されることもあります。アメリカ人のお客さんですね。最初は緊張しましたが、話しかけてみると色々教えてくれて、海外での軍務や日本での生活の違いを教えてくれました。彼らは定期的に世界中の基地を異動になるそうで、色々な国の事情を知っていました。私がこれから行くドイツにも駐在していた経験があるらしく、ドイツのイベントについても写真を見せながら語ってくれました。英語での会話は練習にもなり、異文化交流の楽しさを実感できる瞬間です。

 外国人留学生のお客さんとも交流がありました。トルコから来ている方だったのですが、酔いが回ってきているからか、人生観をカウンターで熱く語ってくれました。彼はまだ20代ですが、真実を求めて苦しい道を歩いてきたといいます。私は全然ひよっこだし、彼に比べたら生ぬるい人生を送っていますが、それでも日々真実を求めて生きているつもりです。日々周りから「考えすぎだよー笑」と面倒くさがられがちな私ですが、国や言葉を超えて彼と出会えたのは嬉しかったですね。つたない英語で私たちたぶん似てるよって伝えて、熱い握手を交わしました。

 

 何気ない会話の中にも、その人ならではの価値観や経験が詰まっています。お客さんとの時間は、単なる接客ではなく、私にとって世界を広げる小さな旅のようなものでした。音楽、映画、異文化、人生――そのすべてがカウンター越しで交わされる物語だったのです。

マスターの店にかける想い

 夜の営業が遅いバーですが、私は終電の関係で早く上がらせてもらう代わりに、開店前の準備から入ることが多くありました。まだお客さんが来ない静かな時間、マスターと二人きりで作業をしていると、ふと世間話からお店のことやご自身のことを語ってくれる瞬間があります。

 マスターは、このお店をもう30年近く続けているそうです。大学時代はとにかく音楽が好きで、ライブハウスやバー、音楽イベントのスタッフなど、音に関わるアルバイトばかりしていたとのこと。その経験の中で「自分でもこんな場所を作りたい」と思うようになり、卒業後にバーを開いたのだそうです。


 「勉強なんか全然してなかったよ、笑」と冗談めかして話すマスターですが、その笑顔の奥には、自分の好きなことを30年も続けてきた誇りが見えました。普通の会社員になる道もあったはずなのに、自分が心からやりたいことを選び、それを仕事として成り立たせている姿は本当に格好いいと思います。

 お店のコンセプトには、マスターの強いこだわりが込められていました。
 「みんなが気軽に音楽を楽しめる場所にしたい。暗くて怖そうな雰囲気じゃなく、誰でも入りやすいバーにしたい。」


 その言葉どおり、店内は温かみのある照明とレトロな洋楽が流れる居心地の良い空間で、初めて訪れた人も自然とくつろげます。お客さん同士が気軽に話せる雰囲気も、マスターの人柄と方針が作り出しているのだと感じました。

 たった3か月の短い期間でしたが、こうしてマスターの原点や信念に触れられたことは、私にとって貴重な経験です。「好きなことを仕事にする」という言葉は簡単に聞こえますが、実際にそれを30年も続ける人に会える機会はそうそうありません。マスターの話を聞くたびに、私も自分の夢をあきらめずに形にしていきたいと強く思うようになりました。

お酒を覚えられる

 バーテンダーの仕事の面白さのひとつは、何と言ってもさまざまなお酒を覚えられることです。カウンターの背後には、ずらりと並んだウイスキーやリキュールの瓶が並び、それぞれが異なる香りや味を秘めています。マスターや先輩に教わりながら1つずつ特徴を知っていく時間は、まるで図書館で新しい本を開くようなわくわく感がありました。

 特に印象的なのは、カクテルを作るときの発見です。「この組み合わせ、本当においしいのかな・・・?」と最初は半信半疑だったレシピでも、お客さんはおいしそうに飲んでいました。

 リキュールの種類も実に豊富で、アーモンドの香りが特徴的なアマレットや、生クリームのようなまろやかな甘さのベイリーズをはじめ、しょうがや紅茶といった少し変わった風味のものまであり、作るたびに新しい発見がありました。

 こうして知識と技術が少しずつ身についていく過程は、勉強というよりも遊びに近い感覚でした。ただ作業をこなすのではなく、お酒そのものの魅力を知り、理解を深められる――それはバーテンダーとして働く中で得られた、何よりの楽しさだったと思います。

スキルと成長 / 大変なこと

ほぼワンオペ・マルチタスク

バーテンダーのアルバイトをしていると、ほぼ「ワンオペ状態」で動く瞬間が意外と多いんです。これ、同じ経験をした人なら「あるある!」と頷いてくれると思います。

というのも、バーってそもそもお店自体が小さめなことが多いですよね。広いホールや大人数のスタッフがいる居酒屋とは違って、カウンターだけとか、テーブルが数席だけ、というケースも珍しくありません。そんな環境だから、働いている店員もたいてい2〜3人程度。時間帯によってはマスターと私の2人きり、なんてことも普通にあります。

ただ、私の勤めているバーの場合、ちょっと特殊(?)で、なぜかマスターがあまり動かないんです(働いてくれ!)。

だから忙しい時間帯だと、私ひとりでお酒を作って、グラスを洗って、テーブルを片付けて、次のお客さんを迎える準備をして……と、複数の業務を同時進行しなければなりません。これがなかなか大変。最初の頃は本当にバタバタで、頭も体も追いつかない感じでした。

でも不思議なもので、人間って慣れるんですよね。週に2回のシフトを続けて1か月くらい経ったころから、だんだんテンポよく動けるようになってきました。最初は「うわっ、どうしよう!」と焦っていた場面でも、メニューを覚えてしまえば自然と手が動くようになる。気づけば「これを作りながら、あれを片付けて、その間にこっちを準備する」という風に、同時並行ができるようになっていました。

もちろん、体力的にしんどいときもあります。特にお客さんが一気に来店して、立て続けにオーダーが入る時間帯は、正直息をつく暇がないこともあります。ましてや卓の半分が英語対応する必要のある外国人観光客で埋まっている!なんてことも。

でも、バーの場合は居酒屋のように常に満席で大騒ぎ、というわけではありません。むしろ1番忙しい時間帯を1時間くらい乗り切れば、あとは落ち着いてくることが多いです。だから「大変だけどなんとかなる」くらいのちょうどいい負荷なのかもしれません。

ワンオペに近い働き方は確かに忙しいし、最初は頭がパンクしそうになることもあります。でも同時に、自分の成長を実感しやすい環境でもあるんです。複数のことを同時に処理できるようになったり、効率よく段取りを組めるようになったり。慣れてしまえば、むしろそれがやりがいにもつながる。

バーテンダーバイトは、ただお酒を作るだけじゃなくて「小さなお店を自分が回している」感覚を味わえる仕事。最初は大変だけど、その分やりがいも大きいんじゃないかなと思います。

バイトのやりがいと楽しさ・まとめ

バーテンダーとして働いてみて、1番感じるのは「人と関われる楽しさ」です。飲食のアルバイトは色々ありますが、バーという場所はちょっと特別。お酒を作る技術や知識ももちろん大切ですが、それ以上に「人との会話」が仕事の大きな部分を占めています。

カウンター越しにお客さんと向き合いながら、会話をしたり、おすすめのドリンクを紹介したり。最初は緊張しましたが、慣れてくると自然とコミュニケーションが取れるようになってきます。常連さんが名前を覚えてくれたり、「たしか君、この曲が好きなんだよね?」などと声をかけてくれたりすると、やっぱり嬉しいものです。人と関わるのが好きな人にはぴったりの環境だと思います。

もうひとつの楽しさは、「自分の知らない世界を知れること」。バーには本当にいろんな人が来ます。会社帰りのサラリーマン、アーティスト、フリーランスの人、観光客など、普段なら出会わないような人たちと会話できるのは大きな魅力です。会話の中で仕事の裏話を聞いたり、海外の文化を知ったり、新しい価値観に触れたり。アルバイトをしているだけなのに、自分の世界が広がっていく感覚があります。これは他の飲食バイトではなかなか味わえない経験かもしれません。

さらに、お酒そのものの楽しさもあります。シェイカーを振る感覚やカクテルを綺麗に仕上げる達成感、知識が増えていく喜び。最初はただレシピを覚えるだけで精一杯だったのが、だんだん「このお客さんにはこんな味が合いそう」と考えられるようになったとき、自分が一歩成長した気がしました。お酒を通じてクリエイティブな部分を発揮できるのも、バーテンダーならではの魅力です。

もちろん大変なこともあります。忙しい時間帯はほぼワンオペ状態になったり、体力的にきついと感じたりする瞬間もある。でも、その分「今日も乗り切った!」という達成感がありますし、忙しい時間を一緒に乗り越えることでお客さんとの距離が縮まることもあります。

総括すると、バーテンダーのバイトは「人と人とのつながり」を一番強く感じられる仕事です。お酒を作る技術を身につけられるだけでなく、会話を通じて人の人生や考え方に触れられる。そこで得た知識や価値観は、自分自身を豊かにしてくれます。バーテンダーとして働くことは、ただのアルバイトを超えた経験になる。私はそう感じています。

だに

だに

立教大学 経営学部 国際経営学科

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