こんにちは、なおきです!
今回は僕が所属しているアコースティックバンドサークル『ヨコシマ。』の夏合宿の模様をお届けしようと思います。
「夏休みの思い出」と聞いて、何を思い浮かべますか?
海、バーベキュー、花火、仲間との旅行――大学生活の中でも、夏は特別な時間です。
私にとって、そのなかでもとびきり濃かったのが、アコースティックバンドサークル「ヨコシマ。」で参加した夏合宿でした。
普段は練習やライブで会うメンバーと、千葉や山梨の自然の中で、3泊4日寝食を共にしながら音楽を楽しみ尽くす。
笑って、歌って、時にはちょっと泣いて、また笑う――そんな“ドラマみたいな青春”がぎゅっと詰まった合宿の日々は、今振り返ってもかけがえのない宝物です。
この記事では、私が1~3年生で参加した3回の夏合宿のリアルな体験をお届けします。
「サークルの合宿ってどんな雰囲気?」「初心者でも大丈夫?」
そんな不安や疑問を持っている高校生や新入生のみなさんに向けて、リアルな“ヨコシマ。の夏”の様子をできるだけ丁寧にお伝えします。
はじめに 〜夏合宿ってどんなもの?
「合宿」と聞くと、体育会系のようなハードな練習や、上下関係の厳しさを想像する人もいるかもしれません。
ですが、アコースティックバンドサークル「ヨコシマ。」の合宿は、そんなイメージとは少し違います。
このサークルの合宿は、音楽と遊びと交流がバランスよく詰め込まれた“文化系ならではのゆるさと楽しさ”にあふれたイベント。
ライブの演奏はもちろんありますが、それ以上に、メンバー同士が音楽を通じて自然に仲良くなれる時間がたくさん用意されているのが特徴です。
日程は毎年3泊4日。1日目は大学に集合して貸切バスに乗り込み、関東近郊の民宿へと向かいます。
荷物を詰めたギターケースとワクワクが入り混じった空気の中、バスの中からすでに合宿は始まっているようなもので、初参加の1年生にとっては少し緊張もありつつ、先輩たちの和やかな雰囲気にホッとする瞬間でもあります。
2日目・3日目はライブが中心。
サークルメンバーがそれぞれ曲を組み、順番に演奏を披露します。
中でも名物なのが、「企画ライブ」と呼ばれる出し物のような演奏形式で、通常のステージとは一味違った、笑いあり・演技ありの自由度の高いパフォーマンスが繰り広げられます。
そして夜には、花火や宴会などのイベントも盛りだくさん。メンバー同士で語り合ったり、ゲームをしたり、海や草原で遊んだり――まるで修学旅行と文化祭をミックスしたような、非日常の時間が流れていきます。
行き先は年ごとに変わりますが、私が1年生のときは千葉県南房総市、2年生、3年生のときは山梨・河口湖の近くの民宿が舞台でした。
どちらも自然に囲まれたロケーションで、音楽と相性の良い最高の環境だったことを今でも鮮明に覚えています。
「ヨコシマ。」には初心者も多く、サークル全体の雰囲気は非常にゆるやか。
上下関係もそれほど厳しくなく、「うまく演奏できるか」よりも「音楽を通じて一緒に楽しむこと」に重きが置かれています。
ライブでミスしても、それすらも思い出になるくらい、あたたかく迎えてくれる空気があります。
それでは、次章から実際の夏合宿エピソードをお話します。

【1年生編】南房総での夏合宿体験
◆ 初めての合宿、ドキドキの出発
大学1年生の夏。サークルに入ってからまだ3〜4ヶ月ほどしか経っていない頃、ついにやってきた“夏合宿”。
参加するかどうか、正直ギリギリまで悩んでいました。
知っている先輩も少なく、同期ともまだ気軽に話せる間柄はほんの一部。
バンド活動には興味があって入ったものの、「合宿」なんて聞くとちょっと体育会っぽい雰囲気を想像してしまって、居心地が悪かったらどうしよう…と、出発前日まで不安がつきまとっていたのを覚えています。
集合場所は大学の正門前。
大きな観光バスが一台、すでに停まっていて、ギターやスーツケースを抱えたサークルメンバーがぞろぞろと集まっていました。
「おはよう〜!」「あ、○○も来てる〜!」と、あちこちで挨拶が交わされる中、私は少し遠慮がちにバスへと乗り込み、空いている席を探しました。
でも、バスが動き出し、だんだんと海が見えてくる頃には――そんな不安もだいぶ薄れていました。
後ろの席の先輩が気さくに話しかけてくれたり、となりの席になった同期と自然と会話がはずんだり。
「この空気、意外とゆるくていいな」と、じんわり安心感を抱いたのをよく覚えています。
◆ 1日目:設営、自由時間、そして夕暮れの演奏
目的地は、千葉県南房総市にある海沿いの民宿。
潮風の香りとセミの声、広がる空と海。都会の喧騒を離れて一気に開放的な気分になれる、最高のロケーションでした。
まずは部屋割りが発表され、それぞれ荷物を運び入れます。
部屋は6人〜8人の雑魚寝スタイルで、夜の寝る前トークがすでに楽しみになるような配置でした。
先輩と同室になった同期が「やばい、めちゃくちゃ緊張する…」とこっそり耳打ちしてきて、一緒に小声で笑ったのも小さな思い出。
その後、ホールの設営。
演奏用のスピーカーやマイクスタンドを並べ、ケーブルをつなぎ、翌日からのライブに備えた会場を自分たちで作っていきます。
最初は何をすればいいかわからなかったけれど、「ケーブルこっちお願い!」「マイク、ハウリング出るかも〜」といった声が飛び交う中で、自然と作業に加わることができて、少しずつ“輪の中”に入れてもらっている感覚がありました。
夕方には、自由時間。
私は同期2人と一緒に、ギターを持ってすぐそばの海まで散歩へ。
浜辺に腰を下ろして、波の音をBGMに、夕焼けの空の下でコードをかき鳴らす――まさに、“大学生やってるなあ”と実感した瞬間です。

日が沈むにつれて空の色が濃く変わっていき、その光景を静かに見つめながら、「来てよかったな」と心から思いました。
夕飯は、地元の食材をふんだんに使った和食。
お刺身に煮魚、アジの南蛮漬け、地場野菜の小鉢など、まるで実家に帰ったようなほっとする味に、お腹も心も満たされていきました。
夜は特に全体イベントもなく、自然とグループに分かれてのんびりタイムに。
先輩たちはトランプやUNOをしていたり、外のベンチでタバコ片手に音楽談義をしていたりと、思い思いに過ごしていました。
私は部屋で同期と、寝袋にくるまりながら恋バナや中高時代の黒歴史を語り合い、初日からすっかり打ち解けることができました。
◆ 2日目:ライブ本番!伝説(?)の「企画ライブ」
合宿2日目。朝からホールには照明が入り、いよいよライブが始まります。
この日のために、参加者それぞれが曲を組み、ギターや歌、カホンなどの編成でパフォーマンスを披露。
先輩たちの圧巻の演奏に圧倒されながらも、同期メンバーのステージにはしっかり拍手と歓声を送り、次第に「いつか自分もこんなふうに演奏したい」と思うようになっていました。
中でも盛り上がるのが「企画ライブ」。
これは演奏とちょっとした演技を組み合わせたコント形式のステージで、ランダムに組まれたチームが、数日前から密かに準備を進めてきた“ネタ”を披露します。
私のチームは、ORANGE RANGEの『イケナイ太陽』に合わせてキャバクラをテーマにしたネタをやることに。
「お客様〜!この後どうなさいます〜?」「指名入りまーす!」など、照れながらも全力で演じるうちに、だんだん会場の空気が温まり、演奏が始まった頃には大きな拍手と笑い声が巻き起こっていました。
たった5分のネタだったけれど、準備から本番まで、濃密な体験でした。
そしてなにより、自分を出す勇気を少し持てたこと、そしてそれをみんなが温かく受け止めてくれたことが、1年生の私にとっては大きな自信になりました。
◆ 3日目:カレー爆盛り事件、そして初めての“宴会”
昼食には合宿名物(?)の爆盛りカレーライスが登場。
大鍋いっぱいに作られたそれは、最初「うわ〜最高じゃん!」と喜んでいたものの、意外にも食べきれない人が続出。
「これ…やばいな」「あと三皿はあるよ」
気づけば私は、先輩からの「悪いけどもう一杯いける?」という視線を受け、同期とともに“残り物処理部隊”に。
なんとか笑いながら食べ切ったけれど、午後はみんなでゴロゴロ。演奏よりお腹との戦いの記憶が残る一日でした(笑)。
夜は花火大会。打ち上げや手持ち花火を囲んで、みんなで「高校時代、部活どうだった?」とか「将来って考えてる?」とか、普段はあまり話さないようなことまで自然と語り合う時間に。

線香花火が落ちた瞬間、なんとなくしんみりしてしまって、「この夏、絶対忘れないだろうな」と思いました。
そしてその後は、宴会タイム。
1年生はソフトドリンクのみでしたが、ジュース片手にゲームに参加したり、カード遊びをしたり、先輩からマージャンを教わったりと、夜が更けても盛り上がりは冷めませんでした。
酔っ払って崩れていく先輩たちを笑いながら見守りつつ、「来年はあっち側なんだな」と思ったのも、ちょっと面白い感覚でした。
◆ 4日目:片付けと、少しだけ寂しい帰り道
あっという間の最終日。
片付け作業をしながらも、みんな名残惜しそうに会場や民宿のあちこちで記念撮影をしていました。
バスに乗り込むと、さすがに全員疲労困憊。
行きのテンションとは打って変わって、ぐっすり眠る人、音楽を静かに聴く人、余韻に浸ってぼーっと外を眺める人…。私も、ギターケースを抱えたまま、静かな満足感の中で目を閉じました。
渋滞で予定よりも遅くなった帰り道。
それでも、「また来年も行こうね」「次のライブ、あの曲やらない?」と話す声があちこちで聞こえ、サークルでのつながりが確かに深まったことを感じました。

【2年生編】“楽しませる側”としての合宿体験
◆ 舞台は河口湖へ、合宿が“懐かしい”に変わる夏
2年目の夏合宿。
集合場所に着いた瞬間、去年の自分がふっと重なりました。
ぎこちなく輪の外から眺めていたあの頃と違い、今年は自然と声をかける側に。
「荷物多い?バスの後ろの方に空きあるよ」
そんな言葉が自分の口から出てくるようになったことに、小さな成長を感じながら、静かに誇らしさも覚えていました。
今回の行き先は、山梨県・河口湖近くの高原エリア。
去年の海も開放的で最高だったけれど、今年の舞台はまさに“爽やかな夏の避暑地”。道中、富士山の姿が見えた瞬間は、バスの中が一気にざわつきました。
民宿は落ち着いた木造づくりの建物で、奥には体育館、そして草原の広場。
到着早々、思わず「ここ、合宿じゃなくて修学旅行では…?」と誰かがつぶやいて、みんなで笑ったのを覚えています。
◆ 自然の中で、全力で遊ぶ。これぞ“大学生の夏”
設営が終わり、自由時間。
昨年はギターを持って海に向かった私も、今年はボール片手に草原へ。
先輩・同期・後輩ごちゃまぜのチーム分けでフットサル大会がスタートしました。

「うぉぉぉ!そっち行った!」「パスくれー!」
ふだんクールな先輩が本気で走り出し、まさかのダイビングセーブ。
私も久々の運動で息が上がりながらも、気づけば声を張り上げていて、完全に童心に返っていました。
夜は体育館でレクリエーション大会。
イントロクイズでは、流れた瞬間に曲名を叫び、答えた後輩が「合ってますか!?」とこちらを振り返るたび、にやりと頷く役回りに。
「ヨコシマ。で鍛えられた音感、発揮してるな〜」と同期に冷やかされつつも、そういう小さな役割が嬉しかったりします。
「人間知恵の輪」では、肩と肩がぶつかりながら大騒ぎ。
「うでっ、折れそう!」「誰かのひざが顔に当たってる!」と、もはやパズルというより騒音のかたまり。
でも、終わったあとはみんなで床に倒れ込んで、ゼーゼー言いながら笑ってました。
こういう、何気ない遊びに全力で取り組めるのも、ヨコシマ。の合宿ならではです。
◆ ライブの中心へ。“やらされる側”から“創る側”へ
合宿2日目からはいよいよライブ本番。
昨年は「自分が浮かないように」「失敗しないように」と気を張っていた私も、今年は完全に場を回す側の意識で臨みました。
今回組んだのは、嵐メドレー(Happiness〜Love so sweet)→ultra soul(B’z)でシメる構成。

後輩ボーカルが嵐を担当し、最後は私がギター&コーラスでぶち上げる、完全に“魅せる”ステージを目指しました。
「もっとテンポ上げていいかも」「コーラスの入り、タイミング合わせよう」
リハーサルでは細かい調整を重ね、終わった後には後輩が「先輩と組めてよかったです…」とぽつり。
たった一言だったけど、胸がじんと熱くなりました。
企画ライブは、今年は「令和vs昭和 カラオケ対決」というお題を設定。
令和チームがYOASOBIを歌いながらTikTokダンスを披露し、昭和チームがジュリーの『勝手にしやがれ』を全力でモノマネする、完全にカオスな構成。
「このネタ、後輩ウケするかな…?」と不安もありましたが、結果は大爆笑。
動画を見返すたび、いまだに腹を抱えて笑えます。
◆ お酒解禁。“飲まされる空気”なんて一切ない
そして、2年生の夏といえば……ついにお酒解禁。
宴会が始まる前、先輩からぽそっと「今年から飲めるね」と声をかけられて、なんだかちょっと背伸びした気分になったのを覚えています。
ヨコシマ。の宴会は、いわゆる“飲みサー”とは違って、「飲みたい人が、飲みたいだけ」が徹底されているスタイル。
私もビールで乾杯した後は、レモンサワーをちびちび飲みながら、マージャン卓に混ぜてもらったり、後輩の恋バナを聞いたり。
「飲みゲーしよーぜ!」と盛り上がるグループの輪の外でも、しっぽり語る場所がちゃんとあって、どこにいても居場所があるのが、このサークルの良さだと改めて感じました。
ある後輩が、「正直、お酒のノリが怖くて合宿参加迷ってたんですけど、来てよかったです」とつぶやいたのを聞いて、心から「だろ?」と答えました。
◆ 合宿が“記憶”から“財産”へ変わるとき
最終日。朝の草原は涼しくて、静かで、どこか寂しさすら感じさせる空気。
後輩が「今度一緒に曲組んでください!」と声をかけてくれて、嬉しさ半分、「あと何回合宿に参加できるんだろう」と思って、ちょっとしんみりしました。
帰りのバスの中。
昨年は窓の外ばかり眺めていた私も、今年はスマホのメモアプリに「合宿の感想」をぽつぽつ書き留めていました。
音楽だけじゃない、日常では味わえない濃密な関係性。
この数日間の経験が、きっとこの先の大学生活でも自分の支えになる――そんな確信を胸に、帰路についたのでした。

【3年生編】“音楽の趣味もノリも本気”だった最後の夏合宿
◆ 河口湖、3年目の夏。最後だから、全部に本気だった
3年目の夏。会場はおなじみ、山梨県・河口湖の民宿。
同じ場所でも、毎年来るたびに空気が違って感じるのは、きっと自分たちの立場や気持ちが変わっているからだと思います。
1年生では緊張、2年生では責任、そして3年生では、「これが最後の夏合宿なんだ」という実感。
下級生たちはすでに顔なじみ。
新しく入った1年生も、去年の自分たちと同じように、少し不安げな表情を浮かべていました。
その様子を見ながら、「ああ、俺たちも、こうして見送る側になったんだな」と実感しました。
◆ ハマり始めたCHAGE and ASKA。こだわりのステージ演出
この年、実は私はCHAGE and ASKAにどっぷりハマっていました。
YouTubeでたまたま聴いた「恋人はワイン色」の歌詞とメロディに心を掴まれ、そこから一気に過去曲を漁るように。
ライブに向けては、彼らの楽曲の中でも「恋人はワイン色」と「ボヘミアン」を演奏曲に決定。


特に「ボヘミアン」は思い入れが強かった。
楽器構成はシンプルにアコギとカホン、シンセ、ベース。
サビの「ボヘミアァアアン」の部分に、エコーをしっかりかけてほしいとPA係に細かく要望を出し、リハーサルでも何度も音の反響を確認しました笑。
本番では、エコーがぴたりと決まり、1年生が驚いてくれたのが嬉しかった。
練習では、ギターのバッキングを繰り返すうちに指先が痛くなってきて、コンビニで絆創膏を買って貼りながら弾いていた日もありました。
「恋人はワイン色」は、ボーカルの音域が意外と広く、キー選びに迷った末、原曲キーのままチャレンジ。ハモリは同期にお願いし、何度も合わせる中で少しずつ曲に“自分たちらしさ”が出てきた気がしました。
もう一曲、サカナクションの「忘れられないの」も披露。
ギターの軽快なリフに合わせて手拍子を入れるアレンジを加えたら、会場が自然に一体化して、最後のアウトロで歓声が起きました。
「地味にリズム取りにくいから練習難しかったんだよね」と笑い合ったのも、今ではいい思い出です。
◆ 最後の宴会。本気の“女装ダンス”にかけた夜
そして、3年生の夏合宿の夜。
私たちは「これが最後の合宿だから、宴会を盛り上げよう!」と、3年生男子で出し物をすることに決めました。
選んだのは、FRUITS ZIPPERの「私の一番かわいいところ」。
まさかの女装ダンスです。

「本当にやるの?」「絶対後悔するやつだよ…」
最初は戸惑いの声も多かったですが、決まってしまえばみんな本気モードになりました。
女子メンバーに頼んで、メイクや衣装のアドバイスをもらい、合間の時間で振り付けを覚える日々が始まりました。
体育館の隅や宿の駐車場で、スマホ片手に「手はこう、足はスッと出す」と鏡のように真似する姿は、ちょっとした異様さすらあったかもしれません笑。
当日は、スカートにカツラ、チークにリップまで完璧に仕上げられた“私たち”がステージに登場しました。
イントロが流れた瞬間、場が一瞬静まり、そして爆笑が巻き起こりました。
一糸乱れぬ(つもりの)フォーメーションで、満面の笑顔で「私の〜一番かわいいところは〜♪」と踊る3年男子の姿に、会場は大いに沸きました。
会場の温度が爆発したのは、ラストの決めポーズの瞬間です。
全員で“ぶりっこ”ウィンクを決めたとき、1年生が「うわぁあああ!!」と叫び、盛り上がりは最高潮に達しました。
終演後には、「笑いすぎて涙が出ました」「来年からの定番にしましょう」と言われたのが、地味にうれしかったです。
◆ それでも、終わりは来る
楽しい時間は、あっという間に過ぎていきます。
最終日、ライブ機材の片付けをしながら、ふと気づきました。
「来年、この作業には自分はいないんだな」と感じました。
帰りのバスでは、後輩から「また曲組んでくださいね!」と声をかけられました。
「もう来年はいないけど、OBとして遊びに来るよ」と返しながら、心の奥では少しだけ胸がチクリと痛みました。
“最後の夏合宿”にふさわしいくらい、音楽にも、遊びにも、本気で向き合った3年生の夏。
それは、きっと私の大学生活の中で、いちばんキラキラしていた時間だったと思います。
おわりに
思い返せば、1年生の夏は不安と期待が入り混じったまま、少しよそよそしい空気の中で始まりました。
右も左もわからず、ただ言われたことをこなしていた1日目。
でも、夕焼けの海でギターを弾いたあの瞬間から、少しずつ自分の中で「ヨコシマ。」という場所が特別な意味を持ち始めたように思います。
2年生では、自分から曲を組み、後輩と関わりながら“楽しませる側”へと意識が変わっていきました。
あの草原で全力で走ったこと、イントロクイズで場を盛り上げたこと、ライブで音を重ねて会場が一つになったあの感覚――どれも今でも鮮明に思い出せます。
“誰かのために準備する楽しさ”と“音楽を通じてつながる温度”を、あの夏で学びました。
そして3年生。
この夏は、笑って、歌って、踊って、心から「やり切った」と言える時間でした。
ライブでは自分の音楽的なこだわりを貫き、CHAGE and ASKAの世界観に少しでも近づけるように工夫を重ねました。
PAにエコーを頼み、構成を磨き、練習を重ねて臨んだボヘミアンのサビ。
あの音が空間に響いた瞬間、ステージに立つ自分がほんの少しだけ“ミュージシャン”に近づいた気がしたのです。
宴会での女装ダンスは、まさに「青春の無駄遣い」のような時間でした。
全力でふざけて、全力で笑って、そして全力で照れながら、みんなの前で踊る――そんな非日常があったからこそ、日常に戻ってもまた頑張れる。そんな気がしています。
もちろん、合宿のすべてが楽しいだけではありませんでした。
練習がうまくいかずにもやもやしたり、夜な夜な振り付けを必死に覚えたり、ライブ直前に弦が切れて焦ったこともありました。
でも、そのどれもが、振り返れば“かけがえのない日々”として心に残っています。
ヨコシマ。の合宿は、ただの旅行でも、ただの音楽イベントでもありません。
「音楽」と「人間関係」が真ん中にあるからこそ生まれる、等身大の青春のかたまりだったと思います。
大学のサークルって、興味のある活動ができればそれでいい、そう思っていた時期もありました。
でも実際に3年間、合宿に参加して感じたのは、音楽がきっかけで人と深くつながることの楽しさ、仲間と同じ時間を共有する尊さでした。
この先、社会に出て、サークル活動のような空間に出会うことは、もうないかもしれません。
だからこそ、あの合宿で得た経験、人との関わり方、何かに本気で向き合った記憶は、私にとって一生の財産になると思っています。
もしこの記事を読んでいるあなたが、「サークルってなんか怖そう」「合宿ってハードル高そう」と思っているなら――
その気持ちはすごくわかります。
でも、一歩だけ踏み出してみてください。そこには、きっと想像以上に温かくて、自由で、笑顔にあふれた世界が広がっているはずです。
そして、その世界のどこかで、あなたも自分だけの「音楽×青春」を見つけてくれたら――
かつてそこにいた先輩として、こんなにうれしいことはありません。
