早稲田大学には数多くの音楽系サークルがありますが、その中でも「ヨコシマ。」はアコースティックを中心とした自由で温かい雰囲気が魅力のバンドサークルです。
初心者から経験者までさまざまな学生が集まり、ライブや合宿、季節ごとのイベントなどを通じて音楽と人とのつながりを楽しんでいます。
本記事では、実際に「ヨコシマ。」に所属して活動している筆者が、サークルのリアルな日常や、自分自身の入会エピソード、ライブ出演や運営に関わった経験をもとに、「ヨコシマ。」の魅力をたっぷり紹介します。
大学で音楽を続けたい、仲間と新しいことに挑戦したい——そんな人にぜひ読んでほしい内容です。
目次
アコースティックバンドサークルって何?
「バンドサークル」と聞くと、大音量のエレキギターやドラムの音が鳴り響くライブハウスのような光景を思い浮かべるかもしれません。でも、アコースティックバンドサークルは少し違います。
エレキギターやアンプを使うのではなく、アコースティックギターやカホン、鍵盤ハーモニカなど“生音”の楽器を中心に演奏を楽しむのが特徴です。

僕が所属している「ヨコシマ。」は、そんなアコースティック楽器を愛する人たちが集まるサークル。
コピー曲をゆるく楽しむ人もいれば、自分で作詞作曲してオリジナル曲を披露する人もいて、スタイルは本当にさまざまです。ジャンルに縛られることなく、それぞれの音楽を自由に表現できる空気感が、このサークルの魅力です。
また、アコースティックサークルというと「静かな曲しかやらないの?」と思われがちですが、実はそうでもありません。
アレンジ次第で力強いパフォーマンスもできるし、何より“音を届ける”ことに集中できるのがアコースティックの良さ。ライブハウスではなく、教室やホールなどで演奏することが多いため、音楽そのものがしっかり伝わるんです。
「ヨコシマ。」ってどんなサークル?
「ヨコシマ。」は、早稲田大学に数ある音楽系サークルの中でも、アコースティックに特化した最大規模のバンドサークルです。
名前からしてちょっとユニークで、初見では「何のサークルだろう?」と気になる人も多いはず。
でも、その中身は、アコースティックの魅力に惹かれたメンバーが集まり、自由で温かな雰囲気の中で音楽を楽しんでいる、そんなサークルです。
サークルの規模・活動頻度
現在のメンバー数は全体で約120人。中には1年生だけで80人近くが入会することもあり、年々その規模は拡大しています。特にコロナ禍以降、ライブイベントが再び活発化したこともあり、「音楽をやりたい」「人とつながりたい」と思う学生が多く入ってきた印象です。
今では音楽系の中でもトップクラスの規模を誇るサークルとして、学内でも存在感を放っています。
とはいえ、人数が多いからといって堅苦しい上下関係やルールがあるわけではありません。
基本的には自主性重視の運営スタイルで、イベントやライブの参加も自由。
どれくらい活動に関わるかは自分次第で、バイトや授業との両立がしやすいのもポイントです。
全体で集まる機会はそれほど多くなく、年に2回の総会(春と秋)で活動報告や次期幹部の発表が行われるほか、夏・冬の合宿、そして音楽以外の各種イベントでの交流があります。


例えば「ヨコシマッチ。」と呼ばれる運動会で合ったり、バーベキュー、クリスマス会など、いわば「大人の文化祭」みたいなイベント。
音楽だけにとどまらず、さまざまな側面でメンバー同士のつながりを深める機会になっています。
ライブ中心の活動スタイル
このサークルの最大の魅力は、やはりライブ活動の充実ぶりです。
基本的に月1回のペースで定期ライブが開催され、それぞれにオリジナルのタイトルがついているのが特徴的です。

例えば、4月の「新入生歓迎ライブ」では、先輩たちが新入生に向けて「ヨコシマ。」らしい演奏を披露し、サークルの魅力を発信します。5月の「新入生ライブ」では、今度は新入生が初めてライブに出演するチャンス。5月の「青空ライブ」、雨の季節をテーマにした「アンブレライブ」、七夕にちなんだ「七夕ライブ」など、季節感や世界観を重視したライブタイトルが毎回工夫されています。
夏には「夏ライブ」と「夏合宿ライブ」があり、特に合宿では2泊3日のスケジュールの中でバンド練や深夜まで語り合う時間が詰まっていて、メンバーとの距離が一気に縮まります。
秋には「ハロウィンライブ」、そして11月には早稲田の一大イベント「早稲田祭ライブ」が開催されます。これは多くのメンバーにとって“引退ライブ”でもあり、気持ちのこもったステージが繰り広げられる、特別なライブです。
12月には「クリスマスライブ」、年が明けてからは2月の「冬合宿ライブ」、そして年度末の「yaYOYライブ」まで、年間で十数回のライブが途切れることなく続きます。
各ライブでは、原則として1人あたり2曲ほど出演可能。演奏メンバーは曲ごとに編成される「フリーバンド制」を採用しており、固定バンドに縛られないのがヨコシマ。ならではのスタイルです。
そのおかげで、ライブごとにまったく違うメンバーと演奏ができ、新しい発見や刺激を得ることができます。
「せっかくならこの人と組んでみたい」「あの先輩のカホンと合わせてみたい」――そんな風に、音楽を通じた“つながりの幅”がどんどん広がっていくのが、「ヨコシマ。」の魅力です。
僕が「ヨコシマ。」に入った理由
僕が「ヨコシマ。」に出会ったのは、大学1年の春、新歓シーズンまっただ中の頃でした。
今でこそ2つのサークルに所属し、充実した大学生活を送っている僕ですが、入学当初はまさに「どこに入ろうか」と迷いに迷っていた時期。そんなときに足を運んだのが、「ヨコシマ。」の新歓ライブでした。
会場に入って最初に感じたのは、音楽の温かさと、それを奏でる人たちの楽しそうな姿。
アコースティックギターのやわらかな音に、カホンやキーボードが重なって、まるで一つの物語のように音楽が流れていく。それぞれのステージに個性があって、でもどこか共通していたのは「音楽を楽しんでいる空気」でした。
そのあと、友人に声をかけて一緒に参加したのが、「ヨコシマ。」の体験説明会です。新歓期間中、サークルでは3〜4回ほど体験説明会を開催していて、大学近くの戸山公園で行われるものでした。
ブルーシートが広げられ、桜の残る春の空の下、まるでお花見のような和やかな雰囲気。みんなで輪になって話したり、アコギを触らせてもらったりして、「音楽サークルってこんなにラフでいいんだ」と驚いたのを覚えています。
先輩たちはもちろん親切で話しかけやすく、ギターがあまり上手くない僕にも丁寧に声をかけてくれました。それだけでなく、同じ新入生同士でも自然に仲良くなれる空気があって、それがまた新鮮でした。
その中にひとり、ずば抜けてギターが上手な同級生がいて、正直ちょっとビビった部分もありました。でも不思議と、そこに「競争」みたいな空気はなくて、「こういう人と一緒にやったら面白そうだな」って思えたんです。
さらに驚いたのは、高校と出身地が同じ先輩に出会えたこと。
たまたま隣に座った先輩と話していると、「あれ、同じ高校?」というまさかの展開。初めて来た場所なのに、どこか安心できるような気持ちになりました。これは偶然かもしれないけれど、「このサークル、何かいいかも」と思わせてくれるには十分すぎるエピソードでした。
もともと、僕は高校時代に軽音部で少しギターをかじっていた程度で、「大学でも続けられたらいいな」くらいの気持ちで音楽サークルを探していました。そんな自分にとって、「ヨコシマ。」の自由な雰囲気と、初心者も経験者も分け隔てなく受け入れる空気感はとても心地よく、ぴったり合っていたんです。
特に惹かれたのは、フリーバンド制という仕組み。
大学の多くの音楽サークルが“固定バンド制”を取っている中で、「ヨコシマ。」は曲ごとに自由にメンバーを組める。ライブごとに新しい仲間と音を重ねることができるこの制度は、音楽面でも人間関係の面でも、大学生活を広げてくれる可能性に満ちていました。
また、活動頻度も無理のない範囲で、自分のペースに合わせて参加できるのも大きな魅力でした。
僕は当時、配達のバイトをしていて、授業や課題との両立も考えなければならなかったので、忙しい日々の中でも“趣味として音楽を楽しめる場”を探していたんです。そんな条件にぴったり合ったのが、「ヨコシマ。」でした。
「音楽をやりたいけど、ガチすぎるのはちょっと……」
「大学でもギターは続けたいけど、あくまで趣味として楽しみたい」
そんな僕にとって、「ヨコシマ。」は理想的なサークルでした。
実際の活動エピソード
「ヨコシマ。」に入ってから、僕はこれまでにいくつものライブやイベントに参加してきました。
その中でも特に印象に残っているのが、初めて出演したライブと、夏合宿での出来事です。
初ライブの緊張と達成感
僕が初めてステージに立ったのは、5月の「新入生ライブ」でした。
それまでは観客としてライブを見ているだけだったのが、いざ自分が出るとなると、リハーサルから本番まで緊張の連続。
初演奏は森山直太朗の『どこもかしこも駐車場』という曲にしました。
今思えば、いきなりこんなド・マイナーな曲選でデビューするのはすごいなと思います笑。
本番前は「このアレンジで大丈夫かな」とか、「メンバーとちゃんと息が合うかな」といった不安も大きくて、前日はほとんど眠れなかったのを覚えています。
でも、いざステージに立って演奏を始めると、不思議と頭が真っ白になって、気づけば最後のコードを鳴らしていました。
演奏が終わった瞬間の拍手とメンバーとのアイコンタクトは、何にも代えがたい体験でした。達成感と安心感、そして少しの高揚感。それが「ライブの楽しさ」なんだと、初めて実感しました。
その後も何度かライブに出ていますが、毎回違うメンバーと演奏するたびに、新しい発見があります。
自分では思いつかないアレンジを提案してくれる人がいたり、表現力のあるボーカルに引っ張られたり。
そういう刺激があるから、ライブを重ねるたびに、自分の音楽の幅も広がっていくのを感じます。
夏合宿で深まったつながり
もうひとつ、忘れられないのが夏合宿です。
9月に3泊4日で行われるこの合宿は、「ヨコシマ。」の中でも特に大きなイベントのひとつ。昼間は広間でのバンド練習、夜はご飯を囲みながらのフリートーク、そして2日目と3日目の日中はすべてライブが行われます。
この合宿の醍醐味は、普段あまり話せないメンバーと一気に距離が縮まること。
普段のライブ準備や全体会ではなかなか交流できない他学年の先輩・後輩とも、一緒に風呂に入ったり、夜中まで語り合ったりする中で、ぐっと関係が深まります。中には、合宿で仲良くなったことがきっかけで、その後のライブで一緒にバンドを組むようになった人もいます。
もちろん、音楽面でも実りが多いのがこの合宿。限られた時間で集中して練習するからこそ、バンドとしての完成度が一気に上がります。
練習の合間にはアドバイスを出し合ったり、セッションが始まったりと、自然発生的に音楽が生まれる環境がとても刺激的でした。
その他のイベント
それ以外にも、「ヨコシマ。」にはハロウィンライブやクリスマスライブなど、季節感のある企画ライブがたくさんあり、衣装を合わせたりステージ演出にこだわったりと、音楽以外の創意工夫も楽しめます。
さらに、不定期で開催されるイベントでは、バーベキューや運動会、クリスマス会など、非音楽系イベントでの交流もあり、サークル全体の雰囲気がとてもなめらかなんです。
こうして振り返ってみると、ただ演奏するだけでなく、人との関係性の中で音楽を楽しむことが「ヨコシマ。」の一番の魅力なのかもしれません。
「ヨコシマ。」で得られたもの
大学生活の中で、「ヨコシマ。」という居場所に出会えたことは、僕にとって本当に大きな意味がありました。
サークルに入ってからこれまで、音楽のスキルや知識だけでなく、それ以上に人とのつながりや、自分自身の成長の機会をたくさんもらえたと感じています。
音楽を通じて得た“自信”と“挑戦する気持ち”
まず、音楽の面では、自分のペースで演奏を続けられたことが何よりの財産でした。
高校までは“部活”として音楽をやっていたので、技術の向上が第一で、練習にも厳しさがありました。
でも「ヨコシマ。」では、演奏の完成度よりも「どう楽しむか」が大事にされていて、無理せず自然に音楽に向き合うことができたんです。
最初は緊張していたライブも、回数を重ねるうちに「次はこうしたい」「もっとこう表現したい」と、自分なりのこだわりを持てるようになりました。
アレンジに挑戦したり、オリジナル曲を披露したこともありました。人前で音を鳴らすことに自信がついたのは、この環境のおかげです。
学部・学年を越えたつながり
「ヨコシマ。」には、さまざまな学部・学年の人たちが所属していて、普段の授業では絶対に出会えないような人たちと知り合えるのも魅力の一つです。
文系・理系問わず、個性的なメンバーが多く、それぞれが音楽への向き合い方を持っているので、一緒に演奏するたびに新しい発見があります。
特に印象的だったのは、自分とまったく違うタイプのメンバーとバンドを組んだときのこと。
お互いの価値観や音楽観をすり合わせていく過程は、簡単ではなかったけれど、演奏がひとつの形になったときの達成感は何にも代えがたいものでした。
音楽を通じた“対話”のような感覚は、大学での学びとはまた違う、実践的なコミュニケーションだったと思います。
居場所としての「ヨコシマ。」
何よりも大きかったのは、「自分の居場所」と感じられる空間があったことです。
正直、大学生活って自由である一方で、どこか孤独を感じる場面も少なくありません。
そんな中で、「ヨコシマ。」に行けば誰かがいて、ギター片手に何気ない話ができる。それだけで、日々の生活に安心感が生まれていました。
合宿やイベント、ライブの打ち上げなど、何気ない時間の積み重ねが、今ではかけがえのない思い出になっています。真面目な話もくだらない話もできる仲間たちと、音楽という共通言語でつながれたことに、心から感謝しています。
より多様な“居場所”を作るために、自分ができたこと
そんな居場所をもっと多くの人にとって心地よいものにしたいという思いから、僕はサークルの運営体制の改善にも携わりました。
近年、「ヨコシマ。」は新歓期の入会者が約1.5倍に増え、全体の規模も大きくなりましたが、その一方で「入ったはいいけれど、なじめない」と感じてしまう人が出てきてしまったんです。
ヒアリングの結果、主な原因は「入会直後に先輩と話しづらい」というものでした。そこで、学年間の壁をなくすために、下級生の運営参加メンバーを従来より3名増やす体制改革を提案・実行しました。
新たに加わったメンバーには、イベントの司会や新入生サポートなどを任せ、自然な形で学年間のつながりをつくる“架け橋”になってもらいました。
この体制変更によって、新入会者の定着率は約50%から約75%へと大幅に改善。より多くの人にとって「居心地の良いサークル」に近づけた手応えを感じています。
もちろん、運営方針の変更には多くの部員の理解と協力が必要でしたが、根気強く説得し、目的を共有することでサークル全体を巻き込む力を育てることができました。
この経験を通じて学んだのは、組織の中で価値を生むには、ただ正しいことを主張するだけでなく、多くの人と目的意識を共有しながら進む姿勢が不可欠だということ。
サークル活動という枠を超えて、大学生活における“組織づくり”のリアルを体感できたのも、「ヨコシマ。」だったからこそだと思います。
これから入りたい人へのメッセージ
「音楽をやってみたいけど、本格的な経験があるわけじゃない」
「新しい友達がほしいけど、大人数のサークルってちょっと不安」
「大学生活、せっかくなら何か形に残ることがしたい」
そんな気持ちを抱えている人がいたら、僕は迷わず「ヨコシマ。」を勧めたいと思います。
「ヨコシマ。」は、技術や経験よりも“音楽を楽しみたい”という気持ちを大切にしてくれるサークルです。
ライブに出る、出ないも自由。練習ペースも自分次第。フリーバンド制だから、演奏するたびに新しい仲間と音を重ねられる。そんな柔軟なスタイルがあるからこそ、初心者も経験者も、自然体で音楽と向き合えるんだと思います。
さらに、「ヨコシマ。」の魅力は音楽だけにとどまりません。
合宿、バーベキュー、運動会、そして何気ない日々の交流の中に、自分の居場所を見つけられる瞬間があります。
僕自身、高校の友人と戸山公園の体験説明会に参加したのがきっかけで、先輩や同期と打ち解け、気づけばそのまま数年間を共に過ごす仲間に出会うことができました。
新歓期には、4月中に複数回の体験説明会が開催されます。
お花見のような雰囲気でリラックスできるので、まずは気軽に足を運んでみてください。楽器が弾けなくても大丈夫。
何となく「気になる」と感じたなら、それはもう十分な理由です。
「ヨコシマ。」は、誰かの“やってみたい”を受け入れてくれる場所です。僕がそうだったように、きっとあなたにも、ここでしか得られない経験や出会いが待っています。